HOME | ピアノのトリセツ | 正しく安全に屋根を開けてグランドピアノ本来の音を。

正しく安全に屋根を開けてグランドピアノ本来の音を。

グランドピアノの屋根「なんとなく」開けてないですか?


グランドピアノの屋根(正式には大屋根と呼びます)は実は楽器としてとても重要な部分です。屋根の開け具合で音が変わるのはもちろん、ピアノの寿命にも関わる大事な部分なんです。
 

ものすごく重いので正しく取り扱いましょう。

 

大屋根の正しい開け方


1.まずはピアノの左側にまわり、 ヒンジの棒が抜けていないか確認してください。
 

 
ごくたまに公共の場所のピアノなどでこのヒンジの芯棒が抜けていることがあります。「前回屋根を外した」「だれかのイタズラ」「その他何かの事情で抜けてしまった」など...いろいろと理由はありますが、もし 棒が抜けている状態で開けようとすると大屋根が落ちてしまい大変危険です。
 

さすがにご自宅のピアノで毎回確認する必要はありませんが、はじめて開けるピアノ、久しぶりに開けるピアノ、公共の場所のピアノでは必ず開ける前に確認をしてください!

 
2. ピアノカバーは外してください。
カバーをかけたままでも開け閉めすること自体はできますが、手が滑ったり引っかかったりして危険です。
 
3 .屋根の前の部分(前屋根)を開けます。

 
4.大屋根を持ち上げ、 支える棒(突き上げ棒)の先の方を持ち、受け皿に挿し込みます。

 

先端を持つことで狙いを定めやすくなります。

 
突き上げ棒の本数はピアノによって違います。ほとんどのピアノはロング/ショートの2本か、ロング/ショート/ミニの3本です。長さによってそれぞれ決まった受け皿があるので、間違えないように気をつけてください。
 


 

※これはヤマハのピアノです。
例えばカワイはそれぞれの長さ用に3つの受け皿があったりと、ピアノによって違います。
 

大屋根と突き上げ棒の角度が90度になればOK

 


 

間違いやすい開け方は2パターン



 

間違えているピアノをSNSや本、映画などでもよく見かけます...

 
大屋根は非常に重いです。
ある程度身長と力がないと難しくお子さんでは開け閉めは無理ですし、大人でも台などに乗っての開け閉めはNGです。絶対に無理はせず、少しでも難しそうであれば慣れている方にお願いをしてください。
 
閉めるときは逆の手順です。大屋根を少し持ち上げて、突き上げ棒を外してそっと下ろします。そのまま大屋根をゆっくり閉めていきます。最後に指を挟まないよう気をつけてください。
譜面台が奥まで入っていることを確認してから、前屋根をパタンと閉めて完了です。
 

Question
屋根は毎回閉めたほうが良い?


練習の途中で休憩するときや、レッスンの合間などにいちいち閉める必要は無いと思います。

 

一日に何度も開け閉めをするのは大変ですし、長い目で見れば屋根や突き上げ棒の根元にも負担がかかります。

 

長時間ピアノから離れる場合や一日の終わりに閉めて頂ければ十分です。

開け方と音


安全に開け閉めができれば、音のお好みや演奏形態に合わせて調整して楽しめます。開閉は最大5パターンあります。
 

オープン3パターン

 


ソロなどでのピアノの基本的な状態で、音量が大きく、音もはっきりします。
 
 

音量は少し抑えられ、音色も若干柔らかくなります。歌やフルート、バイオリンなどの伴奏のときにこの状態にすることが多いです。
 
 

音をこもらせずに小さめの音量で弾きたい場合に適しています。※突き上げ棒が2本のピアノではできません。
 

クローズ2パターン

 


音色はこもりぎみになります。
 
 

大屋根を完全に閉めた状態で、音量、音色は一番弱くなります。この状態では譜面台が使えなくなります。
 
 

いろいろと試してみるとおもしろいかも。

 

基本的には開けたほうが良い


大屋根は開けて弾くのがおすすめです。
 
一番の理由は閉めて弾くと音のバランスが悪くなることです。ピアノは全オープンの状態で一番バランスが良くなるよう設計されています。閉めるとタッチの差も出づらいので、繊細なニュアンスも表現しづらくなります。
また、音が抜けずに中で回ってしまうので意図しない共鳴なども起こりやすくなります。
 
大屋根を閉めているとピアノへのダメージも大きくなり、常に屋根を閉めて弾かれているピアノはハンマーの消耗が早く、弦が切れることも多いです。これはおそらく屋根を閉めて弾くと音がこもるので、無意識にタッチが強くなることが原因だと思います。音色に気を配って弾かれる方ほどこの傾向が強い気がします。
 
音量の問題などはありますが、1/4オープンでも良いので、できれば開けて弾いて頂くとピアノにも負担が少なく本来の音でより楽しめると思います。
 

大屋根を閉めて弾くのはマスクをして歌っているような...あくまでイレギュラーな対応です。

 

もちろん、音のこもりやマスキングされた音の効果を“狙って”あえて閉めて弾くのはありです!

 

すべては思い通りの音を出すために


調律も基本的には大屋根を開けた状態でおこないます。
 
〈良い音〉のひとつの目安として、その音が「弾き手」「設計者・製造者」「調律師」が意図したものであるかどうか、というのがあります。
 
〈思ったとおりの音にならない...〉〈もっとピアノのコンディションを引き出したい!〉と言うときに、閉めていた大屋根を開けるだけで簡単に解決することもありますので、ぜひ試してみてください!
 

関連記事