HOME | ピアノのトリセツ | 夏のピアノが快適に!5月〜10月はピアノの湿気対策を

梅雨〜夏の時期はもちろん、湿度の高い地域や地下室などのピアノにも

梅雨が嫌いなのはピアノも同じ


湿度が高くなってくるとピアノの調子が急に悪くなることないですか?
 
・音が出なくなった
・止まらない音がある
 
などのわかりやすい故障が起こったり
 
・鍵盤が重い
・急に音が狂った
 
なんとなく弾きづらくなったり
 
・内部や裏面のカビ
・金属のサビ
 
実は外からはわかりづらい問題も起こっているかもしれません。
 
ピアノの大半は木やフェルトなどの湿気で膨らみやすい素材です。それらの細かい部品がギリギリのサイズで組み合わさっているので、湿気には敏感に反応します。
 

元々がヨーロッパで生まれた楽器なので、日本の四季には弱いんです。

 

湿気のダメージはピアノに蓄積されていく


今はっきりと不具合が出ていなくても、湿気のダメージはピアノ本体や弦、部品に徐々に蓄積されています。コップに水がたまるように増えていき、あふれると同時に不具合となって現れます。
 
ダメージが溜まっていると湿気に対する許容範囲が少なくなり、湿度がちょっと上がっただけでもあふれて調子を崩すようになってしまいます。湿気のダメージは日々の弾きづらさはもちろん、ピアノの寿命自体にも大きく影響しますので1日でも早い対策が必要です。
 

今出ている不調も昨日今日の湿気だけが問題ではなく、長い間のダメージの可能が原因かも。

 

除湿機をつかう方、増えてます


ピアノに悪影響がない湿度は56%くらいが限界です。
「少しジメッとするな」と感じるときにはたいてい湿度60%を軽く超えています。
 

6月〜9月は何も対策をしないと80%近くまであがることも...

 
ほぼ唯一にして最大の対策は、除湿機をつかうことです。
 
除湿機はその名の通り、部屋の湿った空気を取り込んで乾いた空気にして吐き出す、除湿専用の家電です。
 
除湿機には2つのタイプがあり、ピアノにはコンプレッサー式がおすすめです。消費電力が小さいので長時間つかいやすく、室温があまり上がりませんので快適にピアノを弾くことができます。
 

  コンプレッサー式  デシカント式
原理 コンプレッサーを通して冷媒を循環させる
エアコンと同様の方式
乾燥剤により除湿してヒーターで水に変換
季節 気温が高い場合に有効(梅雨〜夏) 気温が低くても使える(1年を通して)
室温 上がりづらい(1℃〜2℃) 上がりやすい(3℃〜8℃)  
サイズ 大きめ 小さめ
運転音 大きめ 小さめ
消費電力 低め 高め

 

特に防音室などの密閉された狭い空間でデシカント式を使うと我慢できないほど暑くなることも。

ピアノにはこれがおすすめ


ピアノ用として除湿機を選ぶときに大事なのはコンプレッサー式で湿度の設定ができることです。
 
世の中のほとんどの除湿機はそもそも「部屋の湿度を一定に保つ」ことではなく「部屋干しの衣類を乾かす」用に作られています。早く乾かすためにどんどん湿度を下げますので「湿度何%に保ちたい」という要望には応えてくれません。ピアノはとにかく乾燥させればいいというわけではなく、最適な湿度(50%)をキープする必要があります。
 

湿度設定ができるものはあまり多くはないので選ぶのは逆に楽です。

 
リビングなど広い空間には・・・
 

三菱/MJ-P180TX 
 

 

和室19畳/洋室39畳までOK
タンクが大きい
運転音が静か
1ヶ月の電気代の目安:最大約6,700円(常にフルパワーで運転しないので、実際にはこれより安くなります)

 
※毎年新モデルが出ていますが、モデル名とパネルの色などの変更のみのため、以前のモデルP-180SX(2021年モデル)P-180RX(2020年モデル)の在庫があれば安価に購入できる場合もあります。
 
 
6畳の個室などには・・・
 

アイリスオーヤマ/IJC-J56
 

 

和室6畳/洋室13畳までOK
価格が安い
消費電力が少ない
1ヶ月の電気代の目安:最大約2,800円(常にフルパワーで運転しないので、実際にはこれより安くなります)

 
※切り忘れ防止機能で24時間で一旦運転が停止しますので、水を捨てる際などに一度電源オンオフをする必要があります。
 

除湿機のつかい方はかんたん


除湿機になじみのない方はめんどくさい家電だと思うかもしれませんが、箱から出して電源に差し、スイッチを入れるだけです。50%に設定をして24時間運転をしておけば勝手に一定に保ってくれるので、あとはタンクに溜まった水を捨てるだけです。

タンクがいっぱいになると自動的に止まりますので水があふれる心配はありませんが、そのままになっているとまた急激に湿度が上がって逆効果になってしまうので、寝る前や長時間のお出かけの際はなるべく水を捨てる習慣にすると安心です。
 
直射日光や空調の当たる場所を避け、出てくる風がピアノに直接当たらない位置に設置してください。部屋自体の湿度を整えることが重要で、ピアノの近くに置く必要はありません。
 

タンクに溜まった水をバシャーっと捨てるのは結構気持ちいいですよ。

そもそもの話...
エアコンの除湿ではダメ?


エアコンは基本的に温度重視のため除湿力は足りず、設定温度を相当下げないと理想的な湿度までは下がりません。
 

結局ピアノ用には専用の除湿機が必要です。

 

エアコンの除湿についてはnoteにくわしく書いています。

修理の前に環境づくりから


音が出なかったり鍵盤が重かったりするピアノも、修理をする前に除湿機を置いただけで改善するケースも多々あります。
 
まずは環境を整えた上で修理や調整をしていくことで、そのピアノに本当に必要なメンテナンスができます。結果的に費用も抑えられ、ピアノにも負担が少なく済みます。
 
ピアノは我慢をしたり過酷な環境で鍛えられたりすることはないので、ぜひ甘やかしてあげてください。
 
 

除湿された部屋は人にもピアノにも快適!

 
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