HOME | ピアノのトリセツ | 11月〜4月は乾燥から守ってピアノにうるおいを

放っておくと怖い秋〜春の乾燥。種類が多くて悩む加湿器の選び方も。

実は湿気よりもダメージが...


「ピアノに湿気はよくない」
 
これは昔から言われていて、多くの方がイメージすると思います。
たしかに湿気によるピアノの故障は多く、部品がふくらんで音が出なくなったり金属がサビてしまうとやっかいです。でも湿気による故障は意外とかんたんに修理ができたり、後々に影響しないものも多かったりします。

いっぽう乾燥の影響は「ネジがゆるむ」「接着がはがれる」などからはじまり、重度のものでは「部品がグラグラになる」「木が割れる」など、部品の交換が必要だったり、ピアノ本体に大きなダメージを与えて回復が大変なものが多いんです。
 

ほんとうに怖いのは乾燥なんです。

 

乾燥の季節は年々長くなっています


10月中旬から空気は一気に乾燥しはじめ、ベストな湿度50%をどんどん下回ります。調律の際に毎回湿度を記録していますが、ピークの1〜3月頃は30%以下になることもめずらしくありません。暖房の風や熱、日が低くなることなど、この時期は乾燥のもとがたくさんあります。
 
最近の住宅は構造上乾燥しやすかったり、季節の変わり目がなく4月いっぱいまでは乾燥する気候も合わさって以前よりも気をつけないといけないと感じます。

 

 

ピアノを壊す乾燥


乾燥すると単純に音が下がります
弦の伸びやゆるみといった自然な狂いではなく、大きな力で無理矢理ピアノ全体がゆるまされるイメージでしょうか。ピアノに負担がかかる、よくない狂い方です。低い音の弦が劣化して音が響かなくなることも。
 
弾き心地にあらわれる症状では、タッチがふわふわしたり思った強さの音が出なかったり、カチャカチャと雑音がしたりと弾きづらくなってきます
 
雑音がするくらいはまだマシですが、部品がポロッととれてしまうと最悪で、音が出なかったり、逆に止まらなかったりの弾けないレベルの故障も頻発します。
 
そして一番怖いのは「響板の割れ」
ピアノの大事なスピーカー部分である響板に亀裂が入ってしまうと音に張りがなくなったり、ビリビリと大きな雑音がしたり。ピアノの寿命に関わる箇所のため一番避けたい故障です。響板は厚い板ですが、乾燥が強いと意外とかんたんに割れてしまいます。
 

湿気がピアノに「余計なものを足してしまう悪」だとすると、乾燥は「必要なものを奪っていく悪」と言えるかも。

 

加湿器に頼りましょう


そんな危険な乾燥への対策は加湿器をつかうことが一番です。
 
おすすめは水を吸い上げたフィルターに風を当てて加湿する「気化式」です。しずかで、電気代が安く、そこそこの加湿力でピアノには最適です。
 
逆にピアノに適さないのは「スチーム式」ポットのようにお湯を沸かすタイプなので加湿力が高く衛生的ですが、結露しやすく、弦がサビたりと別の問題も起こってしまいます。電気代も高い(気化式の20倍近くになることも)ので24時間使いたいピアノ用には適していません。価格が安くおしゃれなデザインが多い「超音波式」も、衛生面からも加湿力からもおすすめできません。
 
湿度設定ができる気化式というのは最低条件で、加湿力、価格、デザイン、使い勝手、消費電力などを比べてご自分に合ったものを選ぶのが良いと思います。

そして意外と盲点なのがお手入れのしやすさ

加湿器は内部を湿らせてつかうものなので、菌や汚れが発生しやすくこまめなお手入れは必須です。ほとんどのメーカーのウェブサイトで説明書が見られるので、ご購入前にはどういったお手入れが必要なのか...というところはぜひ確認してみてください。その他の選び方としては専用のフィルターは消耗品でシーズンごとに交換する必要があるため、なくなりづらい有名メーカーのものが良いかもしれません。
 

おすすめの加湿器



DAINICHI/HD-RXシリーズ

 
・湿度設定ができる
・運転音が静か
・電気代が安い
 
ピアノ用にはダントツでおすすめです。
※部屋の広さによって対応したモデルがあります(一番広いもので洋室24畳まで)
 

実際に自宅のピアノの部屋(6畳の個室)でも使っていて、常に50%付近で保たれています。電気代を計測したところ1ヶ月24時間つけっぱなしで450円くらいでした。

 

 

交換用フィルターはこちら

正しくつかって効果UP 


ピアノを直接加湿するというよりは空間を加湿することが大事なので、部屋の真ん中や、空気が回りやすい場所に置くと効果的です。
エアコンの風や窓からの冷気、直射日光が加湿器に当たるとセンサーが正常にはたらかないので避けてください。暖房で暖まりやすい床付近よりも少し高さのある台に置くと良いようです。
 
ピアノにとっては湿度の差が大きいことも負担になります。
理想は24時間一定の湿度になることですので、50%または60%に設定をして24時間運転をし50%前後を保つようにしてください。
特に小さなタンクはすぐ空になり運転が止まってしまいますので、寝る前やお出かけの際はなるべく水を満タンにしておくと安心です。

 

あとは加湿器が勝手に整えてくれるので楽ですよ。

WARNING
部屋干しでの加湿は逆効果


洗濯物を部屋干しすれば、湿度が上がって電気代もかからない、洗濯物も乾いて一石三鳥で良いんじゃない?と思った方もいるのではないでしょうか。
部屋干しで湿度が上がるのは一時的で、上がり具合もコントロールできません。そして乾いたときにはまた乾燥した状態に戻ってしまいます。そうなると湿度の差が大きく、一日の中で冬と梅雨が交互に来たような状態になり湿気と乾燥のダブルパンチとなってしまい逆効果です。

乾燥対策はすべてのピアノと人に


湿気よりも乾燥は不快に感じづらいので見逃されがちです。
でも冬の乾燥は年々ひどくなっていて、加湿器をつかわなくて大丈夫なお宅のほうが少ないと思います。
対策をすると音の狂いや故障が少なくなり、ピアノの寿命も伸びますのでぜひ加湿器のご用意を。
 


 

 
 

冬の感染症予防や肌の保湿にも効果大!人もピアノも快適になります。

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