HOME | ピアノのトリセツ | そもそも「湿度」とは何か

湿度100%は、水の中にいるわけではないのです。

意外と知られていない湿度について


ピアノを管理するにあたり「湿度50%がベスト」と言うことだけを知っていれば基本的には問題はありません。
 
でも湿度とはどういうものなのかを知っていると、応用が効き管理がより楽になるのではないかと思います。今回はそんな湿度について、ピアノにかんけいのある部分を簡単に解説していきます。
 
まず大前提、空気には「含むことのできる水分の量」というものがあります。
 

どのくらい水分を含められるかは温度によって変わる


含むことができる水分量は、温度が低い空気だと少なく、温度が上がるほど多くなります
 
例えば10℃の冷たい空気1㎥の中には最大で9.4gの水分が入ります。30℃のあたたかい空気には30.4gまで、と温度によって含むことができる水分量は決まっています。
 
この最大含むことができる水分の量を(各温度の)飽和水蒸気量と呼びます。
 
MAXの容量に対していま実際どのくらいの水分が含まれているか?これが「湿度」です。
 

「湿度100%」は水の中にいる、というわけでは無いのです。

 

湿度50%とはどういう状態か


これは同じ大きさのホールでキャパ300席なのか、1000席なのかの違いのような話で。同じ100席埋まってもキャパに対しての埋まり具合は違います。
 
10℃の空気1㎥の中に入れる水分は9.4gまで。そこに半分の4.7gの水分が入っていれば湿度50%
30℃の空気は30.4gと大容量なので、同じ4.7gの水が入っていても15.5%にしかなりません。30℃の空気が湿度50%になるには、15.2gの水分が含まれている必要があります。
 
これがいわゆる「湿度」の正体で、相対的な割合を示すので「相対湿度」と呼ばれます。
 
水分の割合がどうか?の相対湿度に対して、実際に含まれている水分の量のことを「絶対湿度」と呼びます。〜gの部分です。
 

相対湿度は%、絶対湿度はg/m3と同じ「湿度」でも単位が変わります。

 

これがちょっと分かりづらくしていると思います。

 

なので個人的には相対湿度は「湿度」絶対湿度は「水分量」と言い換えたほうがしっくりきます。

 

湿度100%を超えるとどうなるか


300席の会場では301人以降は座れず立ち見になります。
 
空気は飽和水蒸気量以上の水分を含むことができません。
それ以上の水分が空間中に存在する場合、含むことができない水分は溢れ出て水滴となります。これがいわゆる「結露」です。
 
暖かい部屋でコップに冷たい水を注いだとき、コップのまわりの空気は急に冷やされて飽和水蒸気量が下がります。それまでの温度では問題なく空気に含まれていた水分が急に追い出されることになり、水滴がコップの表面に出現します。
 
寝室の窓が朝方に結露しやすいのは、冷えた外の空気により窓の内側の空気が冷やされることに加え、睡眠中に体から出た水分で空気中の水分量も上がっているからです。
 
どちらも、瞬間的に一部の空気が湿度100%を越えた状態です。空気中の水分量が多ければ少しの温度低下でも結露は発生しやすくなりますし、温度変化が大きいとそこまで湿度が高くなくても結露することもあります。
 

湿度が低いと洗濯物が乾きやすく、涼しく感じる


湿度が低いと空気の中にまだ水分を含む余裕が多い状態です。湿度が低いほど物体から水分を奪いやすく、高いほど水分が抜けづらくなります。
 
余裕があるほど濡れた洗濯物の水分が空気中に蒸発しやすく乾きやすくなります。
 
また、体から水分が抜ける時には気化熱と言って熱も一緒に奪われます。

乾燥しているほうが水分が抜けやすい=熱も奪われやすいので、同じ温度でも部屋を除湿するだけで涼しく感じるのはこのためです。

ピアノにはどうして湿度50%なのか


これはいろいろと理由があるのですが、一番は「木材の含水率」が関わっています。
 
ピアノの大部分を占めている木材には、含まれている水分の「含水率」がものすごく重要です。とくに音質・耐久性に大きく関わる響板の理想の含水率は「8〜10%」これが保たれると、鳴りが良く、狂いづらく、寿命が長くなります。
 
木材には一定の湿度の環境に置いておくと自然とある含水率に落ち着いていく「平衡含水率」という性質があります。「相対湿度何%の環境では木材の含水率は何%に落ち着く」というのが決まっていて、ピアノに適した含水率に保てるのが湿度50%の環境なんです。
 

平衡含水率には温度も関わってきますが、湿度に比べると影響は少ないです。

 

湿度をコントロールする2つの方法


このように、空気の「温度」と「湿度」と「水分量」、3つのものは相関関係にあります。
 
まとめると、湿度をコントロールするには温度か水分量、どちらかにアプローチすることになります。
 
・温度を変える
冷暖房や日当たりなどで空気の温度が変われば飽和水蒸気量が変化し、水分量はそのままでも湿度が変化します。
 
・水分量を変える
除湿機・乾燥剤によって空気中の水分を取り除く、加湿器で水分を足すことで湿度が変わります。
 
また、空間内で温度・水分量の偏りがある場合、サーキュレーターなどで空気を撹拌することで湿度が変化することもあります。直接その空気にアプローチする以外では、換気による外部との空気の入れ替えによっても湿度が変化しますが、これも細かく見れば温度・水分量が変化した結果と言えます。
 
適正な湿度にするために温度を変えるのか?変えるべきは水分量なのか?
 
大事なことは、現状なにが問題でどちらをメインに対策するのが継続しやすいかを考えると、湿度管理が格段にやりやすく、おもしろくなると思います。

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