2021/2/1 掲載
そもそも「ピッチ」とは?
この場合の「ピッチ」というのは正確には「基準ピッチ」です。
基準となる音の高さのことで、ピアノでは下から49音目のラの音の高さが何Hzかということになります。
音の高さHz(ヘルツ)という単位は、数字が大きくなるほど高い音です。
基本的にはラの音を440Hz〜442Hzという高さに合わせて調律します。
それぞれの音どうしの関係は変わらないので、ラの音を高く調律した場合は他の音もその分高くなり全体が高め、ラが低ければ全体が低めの調律となります。
たとえば...
ラを440Hzに合わせると次のラ#は466Hzになり、一番高いドの音は約4186Hzになります。
ラを442Hzに合わせると次のラ#は468Hzになり、一番高いドの音は約4205Hzになります。
ピッチが変わるとピアノの音はどう変わる?
ピッチが高い=弦を強く張っていますので、張りのある音、硬い音、緊張感のある音になります。低く合わせるとその逆で、柔らかく落ち着いた倍音が豊かな音色になります。ガラッと変わると思われていることもあるようですが、ピアノのキャラクターが変わるほどでははなく少しの変化です。
イメージとしては、ブラックコーヒーと砂糖を入れたコーヒーの違いと言うよりは...
砂糖を3つ入れたコーヒーと、4つ入れたコーヒーの違い。くらいが近いかもしれません。
ピッチ440Hzで合わせた場合に比べ、442Hzで合わせた場合は弦の張力がピアノ全体で130kgくらい増えます。ピアノ全体にかかる負担が変わりますので、ピッチ選びは慎重に考える必要があります。
ピッチの指定をしたほうが良いケース
1.他の楽器と特定のピッチで合奏をする場合
各楽器のピッチが揃っていないと音のうなりが発生してしまいます。バイオリンなどその場でピッチが変更できる楽器の場合、そちらをピアノのピッチに合わせることも多いです。
2.レコーディングの場合
合奏と同じく他の楽器と揃える必要があります。ソロの場合も曲ごとのピッチは合わせるケースがほとんどです。
3.好みのピッチがある場合
ただしピアノの状態によってはご希望のピッチにすることが難しい場合もありますので調律師に相談が必要です。
ピッチの指定をしないほうが良いケース
1.ひさしぶりの調律の場合
ピッチが大きく下がっている場合、高いピッチまで一気に上げるとピアノに大きな負担がかかってしまいます。しかも上げるほど反動で下がりやすくなるので実質、正確に指定のピッチに合わせること自体が難しいです。
2.置き場所の温湿度変化が大きい場合
温湿度変化で狂った分を無理やり戻そうとすると、余計な力がかかって今度は逆側に狂ったりしてしまうのでまずは環境を整えることが先決です。
3.特にご希望がない場合
一応指定したほうが得なのでは?と思われるかもしれませんが、ピッチをお任せ頂ければ、季節、狂い方、音色などを考慮してそのピアノと環境にベストなピッチに合わせることができますので、基本的にはお任せ頂くのがおすすめです。
ピッチに良し悪しはない
通常のご使用、特にピアノ単体で弾く場合はピッチは流動的なものと考えて良いと思います。どのピッチが優れてるというこはなく「良いピッチ」と言うものがあるとすれば負担が少なく無理のない、今そのピアノにとって自然なピッチと言うことになります。
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