2019/10/18 掲載
ピアノの音に関して最も重要な「ハンマー」
ピアノの鍵盤は88音あります。それぞれ88個の「ハンマー」が88組の「弦」を叩いて音が出ています。
ハンマーはフェルトを圧縮してかためたもので硬さと弾力がありますが、長年使っていると弦に当たる部分がだんだんつぶれてきます。
切れ味が良かった包丁をたくさん使って刃こぼれしたようなイメージです。
どんな問題が起こるか?
ハンマーがつぶれると弾き心地に色々な影響が出てきます。
・音が悪くなる
正常なハンマーは先端の「点」で弦を叩きますが、つぶれてくると「面」で叩くことになってしまいます。そのため音がこもったり、細くなったりします。
・強弱がつけづらくなる
ppでは細すぎる音、ffでは割れた音になり、「使える音」で弾ける音量の範囲がせまくなってしまいます。
・音色のばらつき
ハンマーによって、つぶれ方は均一ではないため、音によって硬かったり柔らかかったり、音色がバラバラになってしまいます。
・弦への負担大
弦との当たる面積が多くなることや、ひとつの音の中で特定の弦への負担が大きくなり、音が狂いやすかったり弦が切れやすくなります。
・ハンマーの根元への負担大
ハンマー先端に段差ができた状態のため、弦を叩くたびにハンマーがぶれ、負担がかかった根元がゆるくなってきます。
潰れたハンマーで良い音を出すのは、切れ味が悪くなった包丁でトマトを切るような難しいことです。
潰れてしまったり、思ったように薄く切れなかったり...
どんなに上手い人が使っても繊細に切ることができなくなった状態と考えるとイメージしやすいかもしれません。
修理方法
潰れたハンマーは削ることで元のきれいな形に戻すことができます。
「ハンマーのファイリング」という整形作業で、包丁を研ぐのと似ています。
ひとつひとつハンマーを削って形を整え、担当の弦にまっすぐ当たるように角度や左右の位置も調整します。
修理中のハンマーを弦側から見たところ
削る頻度は?
ハンマーファイリングの頻度は通常は8年に1回くらい。よく弾く方やタッチが強めの場合は5年に1回くらい必要な場合もあります。
削るたびにハンマーは小さくなり、削れる回数にも限界があります。4、5回削ってこれ以上削れなくなるとその次はハンマー自体の交換となります。
まとめ
音色が昔と変わってしまったり、思い通りに弾けないのはハンマーに原因があるかもしれません。弦の切れすさや音の狂いやすさも解消したりと、特に古いピアノやたくさん弾かれたピアノはハンマーファイリングでいろいろなことが劇的に良くなることがあります。
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